2017年7月26日(木)にBagyard主催、第46回勉強会『バッグ&小物業界マーケティング&セミナー2018SS』を、CHIENOWA コミュニケーション代表の川崎智枝さん、オンラインライターの鈴木清之さんのお二人をパネリストにお迎えして開催致しました。
代々木公園『qualiteカリテ』にて昼の部、夜の部の2回行い、多くの方々にお越しいただきました。来季のトレンド情報や、日々現場を取材しているお二人にしか出来ないリアリティのあるマーケット情報、また、普段あまり聞く事が出来ない様な業界裏話など、軽快なテンポの絶妙な掛け合いで楽しくレクチャーしていただきました。
セミナーの内容やポイントを、川崎智枝さんにまとめていただきましたので紹介させていただきます。
第46回 BagYard勉強会
『バッグ&小物業界 マーケティング&トレンドセミナー』まとめ
2017年7月26日、奥渋谷のレンタルスペース「qualite(カリテ)」にて、BagYard主催の「バッグ&小物マーケティング&トレンドセミナー」でB.A.G.Number編集長の川崎智枝、B.A.G.Numberディレクターの鈴木清之がパネリストをさせていただきました。
2015年より「B.A.G. Number」という、バッグや服飾雑貨に関するwebマガジンを立ち上げております。現場からのリアルな情報をわかりやすく噛み砕いて、私たちなりの言葉でみなさまにお伝えしていきたいと思います。
以下に、その時のセミナー内容をまとめさせて頂きましたので、ご参考にして頂ければ幸いです。
【1】2017 Äb0マーケットの中にみる注目の「〇〇ファースト」
2017年も半ばになり、前回は「○○消費」という言葉でキーワードをくくりましたが、今回は都議選でも盛り上がった「〇〇ファースト」というくくりでまとめてみました。さてどんな要素いまが消費者のココロに“ファースト”としてとらえられているのでしょうか。
(1)「FUN」ファースト
今年のプルミエールビジョンでも掲げられたテーマ「ファン・ファースト」。「楽しむこと」「ファンタジー性」といった個人個人のエモーションに訴えかけるようなファクターが重要視されるシーズン。また「“編集”から“偏愛”へ」という言葉にもあるように、店も“偏愛”で作られた切り口に人気が出ている。例えば「白Tシャツだけの店」「究極の食パンのみの店」など、ニッチに特化した切り口の方が刺さるキーワードになっている。
(2)「時短」ファースト
現代の人はみな時間が足りないと感じており、“時短”につながるようなアイテムに対する欲求を感じている。コスパが良いのは当然として、いまは「タイムパフォーマンス」の良さも不可欠。例えば「バスタオルではなくフェイスタオルを二枚使って、洗濯&乾燥時間の短縮」とか、「アクセサリーの金具をナス環ではなく、取り外ししやすいマグネットにする」とかの“時短”はささやかに浸透。日常の“イライラ感”の減少を計るのであれば惜しくないと考えている。
(3)「産直」ファースト
「産地直送」という言葉はいままでは野菜などにつけられていたが、これからは“ものづくりの現場”と消費者を直接結びつけるような流通の流れが主力になりそう。多くの中間問屋をはさむことで不明瞭なコストが増えるだけでなく、作り手のパッションも現場に届くまでに薄れがち。ダイレクトに作り手・売り手が繋がることで、より“濃いストーリー性”をユーザーに届けることが可能に。そのための仕掛けづくりや場作りが求められている。
(4)「スマホ」ファースト
「スマホ」が今まで以上に生活の中に入り込み、スマホだけでなく、スマートアイテム自体の存在感も増してきた。「スマホまわり」のアイテムが更に重要になりそう。それに伴ってファッションそのものもプライオリティが下がり、バッグの“ベルト化”が危惧される。いまやベルトは数年に一度のトレンドでしか登場しないアイテムとなり、常に売り場にあるわけではない。そんな未来は考えたくはないが、バッグの存在感を構築しつづけないと難しくなるかもしれない。
(5)「サイズ」ファースト
サイズ感がますます重要なシーズンに。大きめか小さめの両極にシフトし、女性でもビッグサイズとか、またはメンズでも小さいポシェットサイズが人気が高まってきた。また、まったく同じデザインでも、「大・中・小」とサイズを変えてリズム感を楽しむようなアイテムも。型数を増やすだけでなく、サイズそのものを変える方法も今年らしい。
(6)「ソロ」ファースト
「おひとりさま」という言葉が生まれて久しいが、ひとりで何かを楽しむ人たちが近年更に増えてきた。今まで“誰かに見られること”という他者の視線を意識してきたユーザーも、自分自身にとっての「楽しみや喜び」のためになにかを購買する傾向が現れている。このところの大人のキャラクターブーム、聖地巡礼など、“自分の気持ちを満たしたい”という思いに寄り添う消費動向があるようだ。
(7)「応援」ファースト
プロジェクトを応援してもらい寄付を募る「クラウドファンディング」の考え方が国内に浸透してきた中、何かを応援するための消費という形も一般的になってきた。被災地への「応援消費」や「グッズの購買」「ふるさと納税」など、“買うべき理由”が明確になっていることが大きい。若いひとたちにソーシャルなものづくりの「マザーハウス」等のショップが支持されるのも理由のひとつ。
【2】2017秋冬バッグ注目テーマ
今年秋冬に注目されそうなバッグ、小物雑貨でのキーワードをまとめました。
≪レディス≫
① ネオ・ヴィンテージ
70年代のクラシカルなフォルムがカムバック。顔になる ようなビットなどの重厚な金具使いがポイント。かっちりしたスワローマチなどのディテールが新鮮。フォルム面では、レトロショルダー、ブガッティ、バニティ、一本手ショルダーなどどこか懐かしいムードのアイテムが〇。
② 主役級ショルダー
ボディよりも、ハンドルやショルダーひもにインパクトがあるようなデザイン。取り外しも可能なところが人気。チェーン、バンブー、くり手・丸手などの印象的な手元や、フリル使いなど華やかなデザインなど。チェンジショルダーもファーやスタッズ、起毛などにアレンジされて継続。
③ ファー、起毛、クラフト
シーズン素材がカムバッグしている。夏のカゴ、秋のファーが定着しており、さまざまなバリエーションが出そう。起毛系では「ベルベット」が注目。今年は「ほっこりしすぎない」がキーワード。甘すぎる、ウォーミー過ぎるディテールではなく、さっぱりとしたイメージが主流。
④ デザイン&アート
グラフィックなパターンは引き続き継続。素材への新しい加工、型押し、ボンディングなど注目。また「切り子」ナドヲモチーフにした“ネオジャパネスク”の流れや、ロゴやステートメントといった「わかりやすさ」が戻っている。
≪メンズ≫
➀スマート・スタイル
スマートデバイスが生活に浸透し、こういった機器に対応するガジェット対応バッグが求められている。PCを持ち運ぶのに便利な収納性や使用感、ゲリラ豪雨対策としての防水機能、またさまざまなPCまわりのコードなどを収納するポーチなど、いままで手薄だったジャンルが盛り上がってくる。
②脱シンプルの流れ
ベーシックな流れのメンズ傾向が、ここにきて変化してきた。サコシュが浸透するなかで、小さめサイズが拡大。革ポシェットタイプ、巾着タイプなど新たなバリエーションも。またイントレチャート、パンチング、革プリントといった加工アレンジがなされたものが増えている。
≪2017年 ライフスタイル キーワード≫
トレンドだけでなく、ユーザーが求める“ライフスタイル感覚”を押さえておく必要があることから今シーズンの「ライフスタイルキーワード」を挙げてみたい。
➀ 財布&スマートアイテム
メンズのところでも挙げたが、スマートアイテムの進化に伴う商品開発が急務。「フェリカ」対応のキーホルダーなども登場し、アクセサリー感覚の決済システムが出てきた。また財布ではわかりやすいブランドロゴではなく、動物のモチーフ使いや手作り感覚のものが支持され、“自分が楽しい”ことを味わうような方向へとシフトしている。
② “思わず言いたい”機能性
ファッション性だけでなく「機能性」が重要な役割を果たす時代。「こんな風に変わる」「こんなことができる」といったサプライズ感のある機能性が求められている。誰かに言いたい、SNSにアップしたいという欲求をかなえるようなワクワク感がポイント。
③ POSTメイドインジャパン
「メイドインジャパン」であることがものづくりにおいては大変重要なポイントだったが、職人不足や工賃の高騰などで難しくなってるのが現状。またそのキーワードに頼ってしまい、本来のメイドインジャパンのクオリティが保てているのかも疑問な点も出てきた。日本製だけにフォーカスするのではなく、世界に対して新しいものづくりの視点を向けている若い人たちも出てきた。後進国でものづくりを指導したり、アジアの職人とタッグを組むなど、「ジャパンメイド」の視点も必要になってきている。
➃ アラ管・アラ還マーケット
「アラ管」とはアラウンド管理職で、女性活躍社会に向けて管理職に就く女性が増えている。それに伴ってスーツやジャケットを着る機会が増え、きちんとしたかばんに対するニーズも高まっている。わかりやすいブランドものは敬遠されるので“アラ管”女性に向けての提案が待たれる。また「アラ還」はアラウンド還暦。還暦とはいえ60、70代の女性たちは“おばあちゃん”的なファッションとは全く異なるので、若々しく使いやすく“軽い”バッグの開発が急務。
【2018年春夏 トレンド傾向まとめ】
1.春夏注目のカラー
2.秋冬の注目素材
(1) 皮革素材
・ ナチュラル系・・・ソフト&スムース、やや厚手
・ 起毛素材・・・スエード、ヌバック、サマーファー、アストラカン
・ 3D効果・・・シボ効果、エンボス、塩縮、パーフォレート、レース風
イントレチャート、プリーツ、ダブルフェイス、ワッフル
・ 光沢系・・・シャイニー、ポリッシュ、メタリック、玉虫、パール、グリッター
・ 加工もの・・・パンチング、レーザーカット、シワ、ペーパリー、ストレッチ
・ ヴィンテージ・・・クラック、ラスティック、フェード加工
・ エキゾチック・・・パイソン、クロコ、リザード、スティングレー
・ プリント・・・ストライプのバリエ、都会的エスニック、フラワー、果物、鳥
(2)布帛素材
・ ナチュラル系(天然&複合)・・・麻、リネン調化合繊、ナイロン、ポリエステル
・ 表面効果・・・シアサッカー、ハニカム、ドビー、膨れジャカード、プリーツ、シワ
・ グラフィカルなレース・・・ラッセル、トーション、エンブロイダリー、プリント加工
・ 光沢系・・・メタリック、ラミネート、フィルム、箔、オーロラ、サテン、
・ 加工もの・・・ニュービンテージ(微起毛)、ピーチ調、カットアウト
【2017年 バッグ、小物傾向まとめ】
1) 進化するスポーツミックス
アスレジャーの定番化。クラフト感覚をミックス
2) 素材のグレードアップ化
カジュアルに取り入れるエキゾチック。女性たちの“味革”支持
3) サイズ感のビッグorスモール、タテorヨコ
極端なサイズ感、同デザインの大・中・小
4) 「ネオ・ジャパネスク」の動き
外から見た日本の再発見。ジャパンメイドの再構築
5) 「不便益の時代」、「新回顧主義の時代」へ
あえて不便を楽しむ。効率、デジタル化へのアンチテーゼ
以上になります。
今シーズン、来シーズンの商品開発に何かひとつでもヒントになればうれしいです。ぜひ活用してください。