9/18 第6回勉強会報告『栃木レザー工場見学会』

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9月18日に栃木レザー(株)さん見学会が行われました。
予報では少々心配なお天気でしたが、見事に晴れ上がり、上野駅公園口からバスで約1時間半。渋滞もなく栃木レザー(株)さんに到着できました。
参加者は、職人さん、バイヤーさん、メーカーさんなど様々な方面からお集まりいただき総勢25名です。
まずは休憩室で、栃木レザー(株)さんの歴史、皮革産業の現状など社長のお話を伺ってからさっそく工場内へ。

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栃木レザー(株)さんは昭和12年創業という大変古い歴史を持っています。
広い工場施設内には、戦前の建物もあるとか。
大きな一つの建物ではなく、いくつかの建物が連なり合っています。

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工場内には、あちこちに整理整頓や安全確認のを促す注意喚起の標語などがありました。
実際に革をなめす工程どおりに説明をしていただきながら見学します。

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塩漬けにされた原皮と、それを洗浄し半分に切る水洗いと背割りの工程。
栃木レザー(株)さんでは、ヨーロッパのものもありますがほとんどの原皮をアメリカから輸入しているそうです。
それぞれの国の原皮の特徴や、クオリティを保つためのポイントなどの貴重なお話も一緒に聞かせていただけました。
半分に切っても大きくて重い原皮を扱うため、殆ど全ての工程が二人一組で行われます。

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こちらは石灰ピットです。28槽あるうち、現在20槽が稼働しています。
石灰の超アルカリ製の性質を利用し、毛と皮の裏の脂肪などを落とす工程です。濃度の違う石灰槽に順番に浸けていきます。皮にダメージが少なく仕上がりのきれいな伝統的な手法ですが、大変な手間とコストが掛かるため、全生産量をこの方法でやっているのは、世界的に見ても栃木レザー(株)さんだけだそうです。

栃木レザー(株)さんでは様々な工程で伝統的手法を守り、昔ながらの革づくりをしていますが、現代的な環境配慮の取り組みも多く取り入れられています。
脱毛された毛や石灰の排水は併設された専用の施設に送られ、バクテリア分解によって環境への影響を極力抑えて排出されます。
また排水の一部は工場の床や器具の洗浄などにも再利用されています。

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こちらがその除去された脂肪です。
かつて隅田川沿いに数多くの革なめし工場があった時代には、この脂肪は石鹸の材料にも使われていたとか。
現在は、上述の排水処理施設にて、分解するバクテリアの培養に使われています。

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そしてこちらが栃木レザー(株)さんの誇る国内最大のタンニンピットです。ピット(槽)は全部で160。
栃木レザー(株)さんを取材した雑誌などの記事を見たことがある方もいるかもしれませんが、このタンニン槽の写真はいつもこのように薄暗いものではなかったでしょうか。それもそのはず、革は太陽光や蛍光灯などの光で変化していくものですが、このなめしの段階でも同じです。ヤケや品質の変化を防ぐため、このタンニン槽がある建物には照明がありません。

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栃木レザー(株)さんで使用されるタンニンは、ミモザを原料とし、ブラジルの専門プランテーションから輸入されています。
以前は樹脂そのままの塊だったこともあるそうですが、安定した品質と浸透の良さから、現在はパウダー状のものを使っています。
上の写真はそのパウダー状のタンニンが溶かされた原液です。濃度が薄くなった槽に順次送られ、一定のタンニン濃度を保ちます。

薄いタンニン濃度から徐々に濃い濃度のピットに浸けてゆきじっくりとなめしていきます。
かかる期間は約1ヶ月とのことですが、これは革の仕上げによって変わり、最長は8ヶ月にも及ぶものも。
革の特性、使うものによって仕上げを変える、細やかな仕事です。

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タンニン槽から引き上げられ、脱水された革は、油分が抜けて非常に硬くなります。
これに油分を補い、柔軟性や耐久性を高める工程が加脂です。
栃木レザー(株)さんでは、魚・植物・動物などの様々なナチュラルオイルをブレンドし、匂いの少ないオリジナルブレンドオイルを加えます。
このオイルもドイツのメーカーと試行錯誤の末に出来上がったものです。
手にとって匂いをかぐと、かすかになめらかで素朴な香りがします。まるで料理用の油のようです。

革が柔らかくなったところで厚みを均一にし、加工しやすいようにセッターと呼ばれる大型の機械で伸ばします。
革の性質や品質によって、このなめし→加脂→伸ばしの工程は何度か繰り返されます。
セッターで伸ばしきれないほどの不均一な革などは乾燥させてから漉きにかけられます。

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この後、用途や注文に応じて、再鞣し・染色などの工程があります。
染色は芯通しと呼ばれる染色方法。文字通り、芯まで色を通すやり方です。大きなドラムの中で色を定着させていきます。
染料の量、ドラム内で回す時間など、細かくチェックしながらの手作業です。
タンニン鞣しの革は非常に色が乗りやすく、革でしか出せない奥行きと味わいのある色がここで生まれます。

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染色の終わった革は再びセッターにかけられ、伸ばしと脱水が行われます。
ここまで来るとほぼ最終段階に近いので革の表面の風合いを見ながらの慎重な作業が行われます。
セッターで伸ばしにくい性質のものや厚手のものなどはハンドセッターと呼ばれる機械で手作業で丁寧に伸ばしていきます。

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こちらがハンドセッターとその作業風景。
ハンドセッターは非常に重いです。イタリア製とありますね。試しに持たせていただきましたが、ほんの少し持ち上げるのがやっとでした。
これを革の上をすべらせるように動かして伸ばします。中央の溝がついたドラム部分が回転するので持ち上げる必要はないとはいえ相当な重労働です。
お話を聞かせて頂いた熟練の職人さんも1日に40本が限度かなあ、と笑っていらっしゃいました。

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この写真も見覚えのある方もいるかもしれません。栃木レザー(株)さんでは保存・乾燥を行うための専用の建物があります。
ここでじっくりと自然乾燥され、さらに注文に応じて揉みやバタフリなどの加工が行われます。
ちょうど加工前、加工後の製品があり、その仕上がりの違いを実際に見て、手で触れて確かめることができました。

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その後、塗装や計量などの仕上げの工程を経て出荷となります。ここも二人以上で息を合わせながらのチェック作業でした。
全工程を見てきてからの、製品の仕上がりには圧倒されます。原皮の生々しい臭いや、重そうな革を息のあった動作で次々捌いていく職人の方々。
今回の見学の参加者は、革にある程度造詣の深い方々でしたが、皆さん口々に「話に聞くのと見るのとではやっぱり違うね」と仰っていました。

昔ながらの革づくりを守り育てながら、今ならではの新しい試みにも取り組む、栃木レザー(株)さんの『ものづくりの本質』に触れた1日でした。

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